コロタイプ印刷とは
■ 概要
写真製版法としてコロタイプの歴史は古いものです。何度も実験が繰り返され、ようやく1867年になってドイツ人のヨゼフ・アルバートによって事業化されました。日本では写真家の小川一真が1889年に『写真新報』・『国華』誌上で紹介いたしました。コロタイプが日本に紹介されてから、すでに120年が経過しています。
コロタイプ版は、ゼラチンに重クロム酸塩などを添加した感光液を、支持体である厚ガラス版(7〜10mm)に流布して加温乾燥した版です。この版に水分を含ませると微細なシワを版面に形成します。このシワは、印刷の段階で版面に付着したインキを抱くので、アミ目スクリーンをかけることなく、階調を安定させる働きをします。
ガラス版上で乾いた感光液は、光によって急速に硬化する性質と、作用を受けずに緩やかに硬化する暗反応という二つの性質を持っています。この版に連続階調ネガ(写真ネガ)を密着で、光感焼き付けを行って印刷用の版を作るのです。水槽に漬けると重クロム酸塩は、水に溶出して感光性をなくした版となります。再び常温乾燥させた版面を水に浸すと、露光量に応じて水分を吸収しなくなってしまいます。つまり水分の少ない部分にインキが多く着いて、水分の多い(露光量が少ない)部分はインキが少なくなります。これにローラーでインキを着け、紙を押しつけてインキを移しとると、インキと水分が反発しながら連続階調を再現するのです。
コロタイプ印刷は、印刷用原板に密着ネガを使用し、そのまま刷版への焼き付けを行います。このため原稿はなるべく現板と同程度の大きさのもの―上下2カットで1プレートの場合なら5×7インチ判―が望ましいのです。コロタイプ印刷の写真再現は、撮影ネガに忠実なために、オフセットのようにスクリーンを掛けてコントラストをつけることはありません。そのため、撮影ネガの調子を製版時に調整(救済)することはできません。市販品として普及している高感度のフィルムは、フィルム自身の粒状性が粗く、きめの細かな再現ができないのでコロタイプ印刷には不向きです。